総合都市経営を考える ―自治体主導による新たな戦略的連携―
A5判 298p
定価1,650円(本体価格1,500円+税10%)
amazonでの購入はこちらから
エグゼクティブサマリー(PDF)のダウンロードはこちらから
PDFの全文ダウンロードはこちらから
欧州の諸都市は、エネルギー、交通、インフラ、地域再生などの分野において、公企業や私企業、広域行政組織などとの連携を通じて都市経営に取り組んでいる。わが国でも、こうした取組みを参考にする都市がでてきており、日本都市センターでは、2019年8月に「総合的な都市経営(エネルギー・交通等)のあり方研究会」(座長:諸富徹 京都大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)を設置し、総合的な都市経営のあり方について、3ヵ年にわたり国内外の比較研究を行った。本書はその成果である。
わが国でも、戦前から先駆的な都市経営の実践がなされ、その後も都市経営論が議論されてきた。さらに、地方分権改革が推し進められ、住民に最も身近な総合行政主体である都市自治体には、都市経営に総合性の確保の視点が求められてきた。また、NPMのムーブメントで民間の経営手法の導入や民間委託、指定管理者制度の導入、民営化の推進などが進められ、第三セクター等の整理や経営の健全化が進められてきた。しかし、公営企業や第三セクターといった公企業は、一定のリスクを抱えながらも今なお活用され、エネルギー部門での活用や条件不利地域の経済発展など可能性を秘めている。
ここで国内外の動向に目を向けると、人口の少子高齢化の急激な進展、気候変動対応(脱炭素化)やデジタル化などの急速な変化に伴って社会のあり方が一変しつつある。都市や地域の維持・発展のために今後必要となるのは、こうした多様な政策課題に対応するに際して、それぞれの地域の実情に応じて自治体と公企業(公)や私企業(私)などとの連携(=出資・補助・委託・契約等)を有効に機能させることではないだろうか。
こうした問題を考えるために研究会が着目したのは、ドイツ、フランス、デンマークや米国をはじめとする諸外国の自治体の経験である。例えば、ドイツでは都市自治体が公企業や地域の私企業等を統括する「コンツェルン都市」のコンセプトを掲げ、それらの適切な制御を図りつつ、エネルギーや公共交通など幅広い分野で総合的なサービスを提供している。また、デンマーク、フランス、米国ニューヨーク州などにおいても自治体や広域行政組織と公企業や私企業等との多様な形態の連携がエネルギーや交通など幅広い分野でなされて総合的なサービスを提供していることが観察される。
本書ではこれらを概観するとともに、わが国における先進的な取組みにも注目しながら、総合都市経営のあり方を考えるための示唆を探ることとしている。本書が、今後の厳しい時代を乗り切る都市自治体の行財政運営、ひいては都市経営のあり方を考えていく際に多少なりとも貢献できれば幸いである。
第1章 総合都市経営のコンセプトとその多様性 PDF
京都大学大学院経済学研究科・経済学部教授 諸富 徹公益財団法人日本都市センター主任研究員 清水 浩和
第2章 都市経営の理念の系譜(日独比較) PDF
前 公益財団法人日本都市センター理事・研究室長 石川 義憲第3章 ドイツの総合都市経営-都市自治体と出資団体(都市公社等)によるエネルギーと交通を基軸にした戦略的連携- PDF
公益財団法人日本都市センター主任研究員 清水 浩和京都大学大学院経済学研究科・経済学部教授 諸富 徹