報告書

地域社会のグローバル化を見据えた 包摂・共生のまちづくり ~欧州・北米のコミュニティ再生と日本における可能性~

A5判 204p
定価1,650円(本体価格1,500円+税10%)
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日本都市センターでは、2019 年度より事業計画における中期的な研究テーマの一つとして、「超高齢・人口減少・グローバル社会への対応」を掲げ、調査研究事業を実施してきた。その背景は、2019年の入管法改正によって外国人の在留資格として「特定技能」が追加されたことで、就労を目的とした外国人がこれまで以上に増加することが見込まれたことである。都市自治体としては外国人を「住民」として受け入れるにあたって、地域社会の構造の変化に対応したまちづくりのあり方を検討することが喫緊の課題として認識されていた。しかしながら2020 年初頭から日本での感染拡大が始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は状況を一変させ、その後2 年間、地域社会のグローバル化は鈍化した。
 上記のような社会的環境の中、中長期的な地域社会構造の変容を見据えたまちづくりのあり方を検討するため、2021 年度に「グローバル化する地域社会におけるまちづくりに関する研究会(座長:卯月盛夫・早稲田大学社会科学総合学術院教授)」を設置し、欧州・北米における移民・社会的弱者を対象とした都市政策を題材として検討を進めた。各国の事例からは、アフォーダブル住宅、社会的包摂プログラムなど具体的な施策の展開だけでなく、包摂や公正、統合、結束など政策に関わる概念についても論点が示された。
 日本の自治体における外国人を対象とした取組みでは「多文化共生」という用語がよく使われるが、地域社会のグローバル化が進む中では、「多文化」から一歩踏み込んで、社会、経済など総合的な観点からの「包摂・共生」が求められることが、研究会における議論から示唆されている。
 新型コロナウイルスは幾度かの流行の波を経て徐々に日常の経済活動に戻ろうとする動きに移行しつつあり、2022 年の春にはビジネス客、留学生や技能実習生を中心とした外国人の入国が再開し、秋以降は観光客なども含め水際対策はほぼ撤廃された。一方で2022年2 月にはロシアによるウクライナ侵略が発生し、ウクライナからの避難民の受け入れなど、研究会発足当初には想定をしていなかった事態も起こるなど、世界情勢は不安定化しつつあり、地域社会のグローバル化をめぐる将来は予断を許さないが、包摂・共生のまちづくりに関する議論はますます重要になると考えられる。
 本報告書は、各国の政策、事例に関する研究・論考をまとめた第Ⅰ部「欧州・北米の社会的包摂を目指した都市政策」と、日本の都市における課題を設定し、3 回の研究会においてゲストを招いての事例紹介・ディスカッションを行った記録をまとめた第Ⅱ部「グローバル化する地域における包摂・共生のまちづくりの論点」の二部構成となっている。

総論  地域社会のグローバル化に関わる論点と日本における示唆 PDF

早稲田大学社会科学総合学術院教授 卯月 盛夫
公益財団法人日本都市センター 髙野 裕作

第Ⅰ部 欧州・北米の社会的包摂・公正を目指した都市政策

第1章  EU における社会的包摂をめぐる地域・都市政策の展開 PDF

龍谷大学政策学部 教授 阿部 大輔

第2章  URBACT のテーマの変遷に見る衰退コミュニティ再生の特徴 PDF

龍谷大学政策学部 教授 阿部 大輔

第3章 フランスの住宅団地の再生 PDF

立命館大学理工学部環境都市工学科・教授 岡井 有佳

第4章  ドイツの社会都市プログラムによる地区改善まちづくり PDF

早稲田大学社会科学総合学術院教授 卯月 盛夫

第5章  カナダ・トロントにおける社会的包摂を組み込んだ団地再⽣プロジェクト PDF 

筑波大学・准教授 藤井さやか

第6章  米国連邦政府のコミュニティ計画・開発プログラムとエコディストリクト PDF

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授 村山 顕人

第Ⅱ部 グローバル化する地域におけるまちづくりの論点

第1章  第6回研究会講演・議事録「グローバル化する地域における社会的包摂とコミュニティ形成」 PDF

ゲスト講師 可児市市民部人づくり課 若尾真理氏
 東京大学大学院博士課程 圓山 王国氏

第2章  第7回研究会講演・議事録「アフォーダブルで良質な住環境の担保と福祉の連携」 PDF

ゲスト講師:法政大学大学院兼任講師/NPO 法人かながわ外国人すまいサポートセンター理事 稲葉佳子氏

第3章  第8回研究会講演・議事録「地区の衰退・再生とジェントリフィケーションへの対応」 PDF

ゲスト講師:大阪市立大学大学院経営学研究科・商学部教授 藤塚吉浩氏

補論1 日本の外国人集住団地への示唆 PDF

筑波大学・准教授 藤井さやか

補論2 都市更新とジェントリフィケーションの関係性 PDF

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授 村山 顕人
公益財団法人日本都市センター 髙野 裕作

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