都市自治体の文化芸術ガバナンスと公民連携
都市自治体の文化芸術ガバナンスと公民連携
A5判 402p
定価1100円(本体価格1000円+税10%)
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人口減少社会において、複雑化・高度化する市民のニーズへの対応が求められる中で、都市が持続可能な公共サービスを提供していくために、都市のガバナンスにおける公民連携がますます重要になっている。全国の都市自治体においても、公共施設の管理運営だけではなく、地域コミュニティやNPO等との連携も含めた形で公民連携が進められており、民間開放の領域は拡大しつつある。一方で、公民連携の推進にあたっては、公平性・透明性の確保、制御の困難性の解消及び住民感情からの乖離の克服といった課題が顕在化していることも事実である。
これらの課題を踏まえ、日本都市センターでは、2016年度から、2か年にわたり、学識者及び都市自治体職員からなる「都市自治体の公民連携(文化・芸術振興)に関する研究会」(座長:大杉覚 首都大学東京大学院社会科学研究科教授)を設置し、本来的に行政と外部(民間・地域・住民)との連携が不可欠な文化芸術振興を題材の中心に据え、調査研究を進めてきた。
文化施設に関しては、かつてはハード面整備重視の施策、いわゆるハコモノ行政が先行し、ソフト面の整備が追いつかない状況であったことが、現在にも影を落としている。近年では、主に経済的効率性の向上を目的に、指定管理者制度、PPP/PFI等の手法が活用されているが、①都市自治体による適切な制御(公共サービスの安定供給に向けたルール設定、監査等)、②住民ニーズの的確な把握と協働、③事業決定及び実施過程における公正性・透明性の確保(評価)等の課題が指摘されており、また、ソフト面重視の施策、質を重視する方向に変化してきている。
文化芸術振興は、とくにに欧米諸国の都市では、地域のアイデンティティ、住民生活・産業といった面から都市の核心的業務として位置付けられているが、我が国では従来、むしろ民間の領域とみなして行政が積極的に立ち入ろうとはしない傾向があり、行政に専門人材も極めて少なかった。しかしながら、我が国においても、今や、文化・芸術は、地域の存立基盤であり人を集わせ、地域の価値を高め、住民の生きがいやアイデンティティの形成に繋がることが共通認識となりつつあり、その場合、公民連携の形で取り組むべき分野であることはいうまでもない。 そして、文化芸術振興の分野における多様な公民連携の広がりは、公共サービスの提供において都市行政が担うべき役割は何か、さらには都市自治体職員が行うべき仕事は何かということを、改めて問いかけるものである。
本報告書は、全都市自治体を対象としたアンケート調査及び現地ヒアリング調査を踏まえつつ2年間にわたる学識者及び都市自治体職員の議論を積み上げたものである。
第1章 都市自治体の文化芸術と公民連携
(首都大学東京大学院社会科学研究科教授 大杉 覚)
第2章 文化芸術分野における「物と人の混合」-公の施設の指定管理をめぐる公民連携・公民切断の効用と課題-
(東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授 金井 利之)
第3章 文化芸術分野における公民連携の現状
(明治大学政治経済学部准教授 西村 弥)
第4章 文化芸術振興における自治体行政と住民の関係
第1節 文化芸術をまちづくりの礎に-可児市文化創造センターを核として-
(可児市市民部人づくり課長 遠藤 文彦)
第2節 住民と自治体行政との協働による文化施設運営-長久手市の取組み-
(日本都市センター研究員 三好 久美子)
第5章 文化芸術振興における自治体行政と民間の関係-三重県津市と静岡県掛川市を事例に-
(静岡文化芸術大学文化政策学部・大学院文化政策研究科教授 松本 茂章)
第6章 文化芸術振興における自治体行政と外郭団体との連携
第1節 文化芸術振興における世田谷区とせたがや文化財団との連携
(世田谷区生活文化部長 田中 文子)
第2節 公共的民間団体と自治体行政との連携-久留米市の取組み-
(日本都市センター研究員 三好 久美子)
第7章 自治体行政直営の文化施設運営と専門性の確保-いわき市及び西尾市の取組み-
(日本都市センター研究員 三好 久美子)
第8章 文化芸術分野における都市自治体の役割-公民連携を推進するための組織・人員体制-
(獨協大学法学部教授 大谷 基道)
第9章 文化芸術分野における公民連携と評価
(新潟大学大学院現代社会文化研究科・法学部教授 南島 和久)
第10章 文化政策の今後と公民連携
(中央大学法学部教授 工藤 裕子)
第11章 フランス地方都市自治体の文化政策
(東京大学大学院人文社会系研究科研究員 長嶋 由紀子)
第12章 都市自治体の公民連携(文化・芸術振興)に関するアンケート 集計結果
(日本都市センター研究員 三好 久美子)
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