分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究2008
分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究
1.趣旨・目的
当センターでは、昭和39年(1964年)以来、約10年ごとに市役所事務機構研究会を設置し、市役所における事務機構のあり方について調査研究を行い、その成果を公表してきた(第1次:昭和41年4月刊、第2次:昭和53年9月刊、第3次:昭和62年9月刊、第4次:平成11年3月刊)。そこで、第4次の調査研究から約10年が経過した平成19年度から平成20年度の2か年をかけて、第5次の調査研究を実施することとした。
2.調査研究の方法
調査研究に当たって、当センターに学識者及び総務省、都市自治体職員からなる「第5次市役所事務機構研究会」(座長 村松岐夫 学習院大学法学部教授)を設置し、現在転換期にある都市自治体の動態の記録・分析に重点を置いた調査研究に取り組むこととした。
これまでの市役所事務機構研究会では、都市自治体の組織を対象にアンケート調査を実施し、その調査結果を基に分析を行ってきたが、第5次の研究会では、都市自治体の首長個人を対象にしたアンケート調査(首長アンケート)と、都市自治体の事務部門を対象にしたアンケート調査(一般アンケート)との2種類に分け、一層細かな設問により調査分析を行うこととした。
両アンケート調査は、平成19年11月に実施し、首長アンケート(全33問)の回収率が77.9%(627団体)、一般アンケート(全139問)の回収率が81.6%(657団体)であった。
これら2種類のアンケート調査結果については、当研究会の第1次成果物として、報告書『分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究 -市役所事務機構アンケート調査結果報告-』に取りまとめ、平成20年3月に発刊したところである。また、当センターホームページにおいても、2種類のアンケート調査結果を都市自治体の人口規模別に集計し、公表している。
平成20年度は、これらの調査データを活用しての横断的分析や体系的分析を試みており、研究会の各委員によって各々の専門的知見に基づいた一層深く学術的な論考が行われた。
本調査研究の成果物として、平成21年3月に報告書『分権改革は都市行政機構を変えたか』を取りまとめ、当センター50周年記念出版物として、商業出版に至った。
3.調査研究の概要
関連付けされた課題を5つのセクションに区分し、上記出版物もこれによっている。
(1)Ⅰ部「首長と事務機構」
Ⅰ部は、都市自治体の首長の意識と事務機構との関わりについて論じている。第1章は、分権改革と「大合併」に対する市長の評価を分析している。第2章では、マニフェストと総合計画の関係について分析している。第3章は、庁議制度と調整機構について扱っている。第4章は、自治体組織の10年間の変化を、2回の調査の比較から検討し、組織改革の進捗状況と方向性から類型を示している。
(2)Ⅱ部「行政改革と事務機構」
Ⅱ部では、都市自治体が現在積極的に行っている行政改革と事務機構との関わりについて取り上げている。第5章では、都市自治体における事務事業の外部化と、事務機構のスリム化・フラット化について全国的な動向を考察するとともに、具体的な取り組み状況を紹介している。第6章は、都市自治体における定員管理について論じている。第7章では、宇都宮市の現状について、財政運営の視点から紹介している。
(3)Ⅲ部「人事行政と事務機構」
Ⅲ部は、都市自治体における人事行政と事務機構について論じている。第8章では、都市自治体が職員の高齢化に対応するための種々の対策、職員の希望に配慮した人事制度改革、人事評価制度の導入について論じている。第9章は、多様化してきた都市自治体の職員採用方針を論じている。
(4)Ⅳ部「住民と事務機構」
Ⅳ部は、住民と事務機構との関わりについて論じている。第10章では、市役所における環境変化への対応を扱っている。第11章は、「文書保存管理体制の整備」及び「大量の情報公開請求への対処」について、法的観点から検討している。第12章は、浦安市の公募市民による基本計画策定の試みについて紹介している。
(5)Ⅴ部「自治制度と事務機構」
最後にⅤ部は、都市自治制度が事務機構に与える影響について論じている。第13章では、市町村合併が都市自治体の事務機構に与えた影響について分析している。第14章は、都市自治体における住民自治のための仕組みについて論じている。
4. 調査研究の体制(市役所事務機構研究会)
座 長 | 村松 岐夫 | 学習院大学法学部教授 |
副座長 | 稲継 裕昭 | 早稲田大学大学院公共経営研究科教授 |
委 員 | 伊藤 修一郎 | 筑波大学人文科科学研究科教授 |
〃 | 打越 綾子 | 成城大学法学部准教授 |
〃 | 大野 伸夫 | 浦安市総務部長 |
〃 | 岡本 典幸 | 宇都宮市行政経営部次長(平成20年4月~) |
〃 | 小池 裕昭 | 総務省自治行政局公務員部給与能率推進室長(平成20年7月~) |
〃 | 佐々木 敦朗 | 総務省自治行政局行政課長(平成20年7月~) |
〃 | 田尾 雅夫 | 愛知学院大学経営学部教授 |
〃 | 中原 茂樹 | 大阪市立大学大学院法学研究科准教授 |
〃 | 中村 悦大 | 愛媛大学法文学部准教授 |
〃 | 松井 望 | 首都大学東京都市教養学部助教 |
前委員 | 稲山 博司 | 元総務省自治行政局公務員部給与能率推進室長(~平成19年7月) |
〃 | 幸田 雅治 | 前総務省自治行政局行政課長(~平成20年7月) |
〃 | 福田 幹雄 | 前宇都宮市行政経営部長(~平成20年3月) |
〃 | 前田 一浩 | 前総務省自治行政局公務員部給与能率推進室長(平成19年7月~平成20年7月) |
(敬称略、委員は50音順、所属役職等は平成21年1月現在(前委員は委員在任時のもの)
前のページに戻る