2013年度以前の調査・研究

人口減少時代における都市経営のあり方に関する調査研究2007

 

人口減少時代における都市経営のあり方に関する調査研究

1.趣旨・目的

わが国の人口は、2005年に自然減に転じた。これは、近代以降のわが国においては大きな転換点である。ただし、都市圏(人口10万人以上の核都市とその周辺市町村)で実際に人口が減少するのは2010年頃といわれている(国土交通省「都市・地域レポート2005」)。
このような中、都市経営は将来を見据えた難しい舵取りを迫られる状況にあり、今から取り組むべき政策課題も多く存在している。具体的には、ますます厳しくなっていく財政制約のもと、経済活動の停滞、社会基盤の維持・縮小、高齢化による福祉ニーズのさらなる増大などの政策課題が発生すると考えられる。
そこで、本調査研究では、「人口減少社会」によってもたらされるであろう社会経済状況を踏まえつつ、具体的にどのような行政課題が発生するのかを議論するとともに、人口減少下における内外の自治体の取組事例の調査を行い、人口減少社会における都市経営のあり方について検討した。なお、本調査研究では、2030年を概ねの目標年次として、調査研究を進めることとした。

2.調査研究の方法

本調査研究では、平成18年度に引き続き、学識経験者からなる「人口減少社会の都市経営に関する研究会」(座長 大西隆 東京大学先端科学技術研究センター教授)を設置し、6回の研究会での議論により調査研究を進めた。 
平成19年度は新たに、わが国におけるコンパクトシティの事例として、平成19年9月に青森市に現地調査を実施し、前年度の調査研究成果と合わせて、比較検討を行った。 
本調査研究の成果物として、平成20年3月に報告書『人口減少時代の都市経営に関する調査研究』を発刊した。

3.調査研究の概要・成果

第1部では、「人口減少社会」とその影響についてとりまとめた。まず、序章ではわが国の今後の人口動態について、国立社会保障・人口問題研究所の推計を中心に概観した。第1章では、わが国の人口ピラミッドの経年変化が社会経済状況に与える影響について詳細に論じられている(藻谷委員)。第2章では、人口動態が社会基盤に与える影響について、数式を用いた定式化がなされている(上田委員)。

 

第2部では、「人口減少社会」への対応策についてとりまとめた。序章では、総論として、人口減少は将来的にはどの地域においても不可避の現象であり、既にどのように人口減少に適応した形の政策を展開していくかという局面になっていることを論じた。第1章では、人口減少時代におけるまちづくりの基本的な方向性について論じられている(大西座長)。第2章では、サスティナブルな地域社会を形成するための、人口・経済・財政面での基盤について、それぞれ論じられている(松谷委員)。

 

第3部では、人口減少が都市自治体に与える影響とその課題については、以下のように、地域によって異なっていることを論じている。

 

①大都市圏の中心部:今後迎える急速な高齢化への対応が急務である。 
②大都市圏の衛星都市:高齢化の速度は大都市圏の中心部以上に激しく、地域によっては人口減少にも直面する。こうした状況を乗り切るためには住民自身、とりわけ元気な高齢者が公共サービスの担い手となることが重要である。
③地方の中核都市:郊外化によるインフラのコストが維持できなくなっており、この課題に対して、コンパクトシティ等の施策により対処していく必要がある。 
④地方の中小都市:開発圧力は地方の中核都市ほどではないが、ロードサイドの開発には留意が必要である。
⑤農村地域:地域によっては、集落そのものを維持することが困難な地域もあることから、こうした地域では、集落をいかにして再編していくかが課題となっている。

 

第4部では、現地調査した事例及び研究会で報告いただいた事例について、それぞれとりまとめている。第1章では、青森市のコンパクトシティの取組みについてとりまとめている。第2章では、福井市のコンパクトシティの取組みについてとりまとめている。第3章では、豊田市の子育て支援の取組みについてとりまとめている。第4章では、豊中市の千里ニュータウン再生の取組みについてとりまとめている。第5章では、先進国の中では人口動態が日本と比較的近く、「シュリンキング・ポリシー」等の都市政策上の先進的な取組みがみられるドイツの現地調査についてとりまとめている。

4.調査研究の体制(人口減少時代における都市経営に関する調査研究会)

座 長 大西 隆 東京大学先端科学技術研究センター教授
委 員 上田 孝行 東京工業大学大学院工学系研究科教授
松谷 明彦 政策研究大学大学院教授
藻谷 浩介 日本政策投資銀行地域振興部参事役
森田 朗 東京大学大学院公共政策学連携研究部・教育部部長

(敬称略、委員は50音順、所属役職等は平成20年3月現在)

 

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