2013年度以前の調査・研究

美しい都市づくりに関する調査研究2005

 

美しい都市づくりに関する調査研究

1.趣旨・目的

美しい街並をつくるには時間がかかるが、街を醜くしているものをなくすだけで、街をきれいにすることはできるという考え方に基づき、美しい都市づくりのあり方について検討した。

2.調査研究の方法

調査研究にあたり、当センターに学識経験者からなる「美しい都市づくり研究会」(座長 西村幸夫 東京大学大学院工学系研究科教授)を設置し、研究会での報告および議論により調査研究を進めた。また、都市自治体などを対象とした現地ヒアリング調査を実施した。調査研究の成果として、平成18年3月に報告書『美しい都市づくりのすすめ-まず醜いものをなくすことからはじめよう-』を発刊した。

3.調査研究の概要

景観法において自治体が任意に連携できることとされている①屋外広告物および②電線・電柱に加え、景観法において直接的に想定されていないが、美しい都市づくりにおいて重要な要素である③パブリック・アート、④放置自転車、⑤たばこの吸殻・空き缶などのポイ捨て、落書きを取り上げた。
そして、人々が協力して醜いものをなくす取組を始めることが、美しい都市づくりのための第一歩であり、コミュニティの再生にもつながるという考えに基づき、次のような指摘と提言を行った。

(1)屋外広告物 
屋外広告物は都市の景観を形成する重要な要素である。現在、街には違反広告物が氾濫し、どこへ行っても同じような広告が並び、景観を阻害している。管理・補修が適切に行われていない広告物、少しでも目立つように無秩序に取り付けられた広告物はもちろん、地域の個性や文化が感じられない広告物は醜い。
このような観点から、複雑で分かりにくい規制の基準を明確化すること、広告主の責任を追及すること、過料や強制金制度の導入を検討することを提案した。また、住民の意見を集約して醜い広告物にはNO!と言うような取組を行うこと、簡易除却などにおいて住民やNPOとの協働を進めること、屋外広告物を積極的に活用して良好な景観を形成しようという取組も重要である。

(2)電線・電柱 
欧米の都市に比べ、日本の無電柱化は遅れており、特に非幹線道路(市区町村道)はほとんど進んでいない。近年、「蜘蛛の巣」化した電線が街並を醜くしていると考える人は増えつつある。また、地震や水害などの災害の多い日本では、安全面からも、無電柱化の要請は強い。
このような観点から、景観ばかりでなく安全や防災も前面に出して無電柱化を推進すること、ある地域について、どの箇所をどの手法で無電柱化するかを面的に示した地域別の無電柱化総合計画を策定すること、住民、道路管理者、地元自治体、事業者などが連携・協力して無電柱化の推進体制を確立することが必要である。

(3)パブリック・アート 
街中に彫刻を設置する事業は、都市景観の修景、文化振興、記念碑(モニュメント)の建立などを目的として、全国の自治体で盛んに行われてきた。しかし、実際には、「彫刻公害」や「不幸なパブリック・アート」という指摘があるとおり、街を醜くしている場合が多い。
このような状況を改善するために、パブリック・アートの設置・整備の基本方針を策定すること、住民のコンセンサスを得て、住民参加のもとで設置・整備を行い、周囲の環境と調和していないパブリック・アートや街具(ストリート・ファニチャー)を撤去・移設することが求められる。窓口となる担当セクションの指定やデータベースの作成など、庁内体制を整備することも必要である。

(4)放置自転車 
放置自転車は、交通安全上、問題であるのみならず、景観上も大きな問題となっている。放置自転車の数が多く深刻な問題である大都市圏においては、放置自転車はまずもって交通安全上の問題であり、撤去を含めた厳しい取締りが必要である。一方、道路の幅が広く、駐輪場の確保もしやすい地域においては、交通安全上の問題というよりは景観の問題である。このような地域特性に応じた放置自転車の撤去・整理整頓の取組が求められる。このような観点から、環境負荷の少ないまちづくりやコンパクトシティという観点からの自転車対策、自転車利用者のニーズに合致した駐輪場の整備、道路特定財源を活用した駐輪場整備が必要である。

(5)たばこの吸殻・空き缶などのポイ捨て、落書き 
近年、ポイ捨てや落書きについて工夫を凝らし、独自の規制を盛り込んだ条例が増加している。ポイ捨てや落書きは本来、住民一人ひとりのモラルや自覚によるところが大きい問題であるが、これらの条例は、ルールを定めて取り締まることにより、究極的にはマナーを呼び起こそうとする狙いがある。
ポイ捨てや落書きをなくすためには、一人ひとりのマナーを高めること、ポイ捨てなどを誘発する小さなごみをなくすことが重要である。それらの取組が、犯罪を抑制し安全・安心なまちづくりへとつながり、その過程でコミュニティ活動を活発にすることになる。

4.調査研究の体制(美しい都市づくり研究会)

座 長 西村 幸夫 東京大学大学院工学系研究科教授
委 員 櫻井 敬子 学習院大学法学部教授
土岐 寛 大東文化大学法学部教授
松原 隆一郎 東京大学大学院総合文化研究科教授

(敬称略、委員は50音順、所属役職等は2006年3月現在)

 

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