森林政策と自治・分権 ―「連携」と「人材」の視点から―
A5判 152p
定価1,650円(本体価格1,500円+税10%)
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我が国の国土の3 分の2 以上を占める森林は、水源涵養や防災、景観、生態系保全、CO2 吸収等の多様な機能を有することが認められている。また近年では、脱炭素社会や資源・エネルギーの地域内循環型社会への構造転換が迫られる中で、森林から産出される木材が再生産可能な資源である点も注目されている。このように、多様な機能を有し持続的な社会の構築に欠かせない森林に対する社会的な期待は大きいと言える。一方で、戦時体制下と戦後復興期の過剰伐採とその後の拡大造林政策、外国産材の輸入自由化といった度重なる環境の変化を経て、今日では林業経営の悪化や過疎化等に起因する森林の管理問題が顕在化して久しい。
それに対して市町村は、森林法に基づく市町村森林整備計画の策定や各種届出の受理、勧告、命令等の多くの権限を有するのみならず、2019 年度より開始された森林経営管理制度や森林環境譲与税においても制度実施の主体として位置づけられ、さらには森林・林業に関する地域課題への対応を求められている場合もある。そのような中で、それぞれの自治体では自らの判断で方針・実施体制を整備しつつ、時には独自の施策を講じて対応している。
市町村合併によって広大な森林を抱えることとなった自治体が多く存在することに加え、冒頭に挙げた森林からの恩恵を大都市圏の自治体も享受していることを考慮すれば、すべての自治体に関わるテーマとして自治体森林政策を展望する必要性は高いと考えられる。
以上のことから、日本都市センターでは2022 年度に学識者や自治体実務担当者からなる「都市自治体の森林政策に関する研究会」(座長:西尾隆 国際基督教大学教養学部特任教授)を設置し、調査研究を進めてきた。
研究会で話し合われた論点は、国の森林政策の問題点と市町村への影響に始まり、森林経営管理制度・森林環境譲与税の対応や地域に資する林業支援といった各種施策、市町村と森林所有者及び森林組合との関係・役割分担のあり方、組織体制については、森林政策に必要とされる専門性とその確保方法、職員の人材育成と現場を知ることの重要性等、広範にわたった。最終的には、それぞれの自治体が地域の森林に対していかなる政策を実施すべきかを自律的に選択し実行する「自治・分権」と、政策プロセスにおける都道府県・他市町村や森林組合等の関係機関との連携、山村部と都市部の連携、さらには異なる政策分野間の連携等、様々な主体や要素が結び付く「連携」の重要性に関する議論へと昇華した。
本報告書は、上記の議論の成果及びゲストスピーカーとして招聘した有識者の講演、ヒアリング調査の結果を取りまとめたものである。
第1章 自治体森林政策の現状と課題~自治・分権から見た問題状況~ PDF
国際基督教大学教養学部特任教授 西尾 隆
第2章 都市・山村連携と自治体の役割 PDF
高崎経済大学地域政策学部教授 西野 寿章
第3章 市・県・森林組合の相補関係に基づく自治体林政の体制づくり PDF
北海学園大学経済学部教授 早尻 正宏
第4章 豊田市における森づくり施策の展開 PDF
豊田市産業部農林振興室森林課担当長 小山 剛
第5章 自治体における森林行政の実践と展望
-秩父市・横瀬町・高山市・真庭市・宇和島市の事例から- PDF
日本都市センター研究員 田中 洸次
第6章 講演-市町村が目指すべき森林政策とそれを担う人材- PDF
造林技術研究所代表 横井 秀一
終章 自治体森林政策の方向性 PDF
国際基督教大学教養学部特任教授 西尾 隆
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